はじめてあの人を見たとき、ほんとうは少し怖かった。
こわいから、虚勢を張って、意地になって戦おうとした。
そんなわたしを、あの人はやさしく説き伏せて、それから、ぎゅっとわたしを抱きしめた。
すこし低い声。あたたかな胸と、規則正しい鼓動。
何故だか急に眠たくなって、私はこの人に身を任せたのだ。
「くるよ。気をつけて」
凛とした声音で紡がれる指示に頷き、わたしは武器を構えた。
わたしはあなたの剣。あなたの盾。
あなたの手足となって働けることが、ほんとうに、ほんとうに嬉しいのだ。
風より速く飛びだし、あの人に襲いかかる狼を一閃、槍でなぎ払う。
わたしはあの人と狼の間に立ち、気配をとがらせた。
ダイアーウルフ…その凶暴さで名を知らしめた強敵だ。
敵は鼻に皺を寄せて低く唸る。剥き出しになった牙の間から涎が滴り落ちた。
殺意のこもった目線で射抜かれて体が委縮しそうになったが、踏みとどまる。
背中にあの人の気配を感じる。私を褒め、励まし、助けてくれる温かな気配。
わたしは狼をにらみ返した。
痛いことも、くるしいことも、あなたのためだと思えば我慢できた。
「おつかれさま」
そう言ってやさしく頭を撫でてくれる。
美味しいご飯を食べている時より、綺麗なマントを買ってもらった時より、
そのひと時がなにより嬉しい。
わたしは彼に口づけた。
ふさふさの自慢のしっぽを左右に振り、何度も口づけて、全身で愛を表現する。
「こら、やめろよ」
その度に彼は、くすぐったそうに笑って、片手で私の口元を塞ぐのだ。
わたしは何度もかれに口づける。
一生懸命伝える。
あなたがすき。世界中のだれよりも。
でもわたしがどんなに唇を寄せても、あの雌のキスに敵わない。
ほんとうなのに。うそじゃないのに。
わたしは貴方の剣。あなたの盾。
あなたの為に戦えることがわたしの幸せ。
「キエエック」
わたしはもう一度ささやいた。
精一杯の”好き”を詰め込んだはずなのに、なぜか寂しそうな声になってしまった。
百万回のキスでも届かない
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あとがき
なにかのパロディで
ペット→テイマーの切ない片想いの話を書いたんですが
最後の「キエエック」で全てが台無しになりましたね。
ちなみにファミです。
病気コボではないです。
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